交流分析(Transactional Analysis,以下TAと略す)はアメリカの精神科医エリック・バーン(1910-1970)により開発された人格心理学であり、また心理療法の理論と技法です。TAは4つの基本理論と3つの周辺理論から成り立っています。
TAは、次の4つの理論を柱としています。
これに加えて、バーンは刺激欲求、承認欲求、構造欲求という人間の欲求に注目し、ストローク、時間の構造化、人生の基本的態度という3つの理論を作り出し、基本理論と関連付けを行いました。
カウンセリングにおいて、まず必要なのはカウンセラー自身の自己理解です。
次にクライエントを理解し、さらにカウンセラーとクライエントとの関係、すなわちカウンセリングのプロセスを理解することが必要です。
TAの理論はそのために有用です。カウンセラーやクライエントの自我状態に汚染*はおきていないか?クライエントの脚本はどのようなものか?今ここで、カウンセラーとクライエントの間でゲームは起きていないか?カウンセリングのゴールはなにか(契約*)?など、カウンセリングの過程をTA理論で分析し、カウンセリングの道程を明らかにしていくことができるのです。
*汚染:成人の自我状態が、「親」の偏見や「子供」の思い込みに惑わされて、現実に即した判断を誤ること。
*契約:カウンセリングの目標を明確にし、それに向かって進むことを合意。
小さいころに作った時代遅れの地図(人生脚本)から自由になり、大人としての自分が持っている、”今、ここの生き方を選択すること。
脚本を書き換えること、とも言われるが、最終的には脚本から脱却し、自由になること、すなわち自律性を獲得すること、であると私は考えている。
次に挙げるポーシャ・ネルソンの詩は、まさにそのプロセスを現している。
Ⅰ.
私は通りを歩く。
歩道に深い穴がある。
私は落っこちる。
どうしたらいいのか分からない・・・どうしようもない。
これは私の間違いじゃない。
出方がわかるまでものすごく時間がかかる。
Ⅱ.
私は同じ通りを歩く。
歩道に深い穴がある。
私はそれを見ないふりをして、
またまた落っこちる。
また同じ場所にいるのが信じられない。
でも、これは私の間違いじゃない。
やはり出るのにずいぶん時間がかかる。
Ⅲ.
私は同じ通りを歩く。
歩道に深い穴がある。
それがあるのが見える。
それでも私は落っこちる・・・これは習癖(くせ)だ。
私の目は開いている。
自分がどこにいるのかわかる。
これは私のしたことだ。
すぐそこからでる。
Ⅳ.
私は同じ通りを歩く。
歩道に深い穴がある。
私はそれを避(よ)けて通る。
Ⅴ.
私は別の通りを歩く。
by Portia Nelson
I.
I work down the street,
There is a deep hole in the sidewalk
I fall in
I am lost…I am helpless
It isn’t my fault,
It takes forever to find a way out.
II.
I walk down the same street,
There is a deep hole in the sidewalk,
I pretend I don’t see it
I fall again
I can’t believe I am in the same place.
But ,it isn’t my fault.
It still takes a long time to get out.
III.
I walk down the same street,
There is a deep hole in the sidewalk,
I see it is there
I still fail in...it's a habit
My eyes are open
I know where I am
It is my fault.
I get out immediately
IV.
I walk down the same street.
There is a deep hole in the sidewalk.
I walk around it.
V.
I walk down another street.